Jリーグ・チップスの大人買い [2]

Jリーグ・チップス [2]

私はカゴを放り投げて、そのまま店から脱出したい衝動にかられたが、踏みとどまった。
そんなことをしたら、【おごりかたぶった】上に、【奇怪な行動をする奇妙な大人】になってしまうからである。

私は、後ろの少年をこの世に存在しないものとし、視界に入れないようにし、まっすぐ前を向いて、レジの順番を待った。

私は気が小さいので、ある意味で、自毒の時間であった。
(やや大げさ…)

それにしても、なぜ私が、そういう【自分が人でなし】みたいな気持ちにならねばならないのだろう。私の中に、(いじけた逆ギレ】みたいな感情さえ芽生えていた。

そもそも50円と1000円の違い…たったそれだけのことである。
私の出費金額が、10万とか100万円とかじゃあるまいし…。
大人だってJリーグカードを集めたっていいし、大人は働いているのだから1000円2000円ぶんのお菓子を買って何が悪い!、というように思ってよいだろう。

この少年にだって、
「この人、すごいな。こんなに買えて。よし、ボクも大人になって、この人みたいにいっぱい好きなものを買うんだ!」
と思い、私は彼に、良い励み・良い影響を与えているかもしれないではないか。
(一応の理屈…)

私だって子供の頃に、
「大人になってシュークリームを30個買って一度に食べる」
という目標を設定していたのだし。
(ゲームで儲けて、新宿駅から当時のエニックスに通う道で、何度もそれを実現!)

私もに限らず誰もが、大人になってそういう目標をいくつか達成し、その喜びをかみしめたはずである。
(なんか小さい話だが…)

レジに並んでいた私は、周囲の人々が、私とその少年を見て、私の【大人気なさ】に冷笑を浴びせているように(たぶん気のせい…)思え、自分の殻にこもって時間が過ぎるのを待った。

私はいたたまれない気持でそそくさと会計をし、そそくさと袋詰めをし、逃げるように店を出た。その間、少年のことは一切見ないようにした。

そして、 そんなことをする必要はなかったと今でも思うのだが、私はその日でJリーグチップスを買うのをやめた。Jリーグカードの収集もやめた。

あのときの少年はとっくに大人になっているだろう。
あの少年はあの日の私の大人買いの勇姿に憧れてしまい、大人となった今、AKBのCDをいっぱい買って『総選挙』に入れ込んでいるかもしれない…。
ふと、そんなことを考えるときがある。

(このお題、完)

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2019年01月05日