【絵馬019】殺生やめたので、天国に…

<今日のお題>

殺生やめたので、天国に行けますよね!

その絵馬に書かれた願い事の、本当の意味とは?

 

【スノーウィー神主のつぶやき】

この願文は、日本人の宗教観が出ていて興味深いですね。

日本的(神道的)、仏教的、キリスト教的なものが、ごちゃ混ぜになっています。

 

古今和歌集(10世紀初頭)の『仮名序』(紀貫之)の中に、

「花に鳴く鶯、水にすむ蛙の声を聞けば、生きとし生けるもの、いづれか歌を詠まざりける」

とあるそうですが、この「生きとし生けるもの」というのは、「この世に生きている全てのもの」という意味でしょう。

 

「いきもので、歌を詠まないものなどあろうか?」

というわけですから、

「虫でも動物でも歌を歌うんだから、殺すなんて、とんでもない」

ということから、

『小動物の殺生もダメとなった』

…というわけじゃなそうですね。

 

やはり動物だけでなく、昆虫類のような小さな命でも大切にしようという心がけは、どういう宗教にても語られているかもしれませんが、日本においては仏教の影響が大でしょう。

 

日本人は、仏教が渡来してから、よい後生を願うために殺生を嫌うようになり、平安貴族あたりは肉食をしなかったので体格も顔色も悪かった、という説もありますよね。

 

そうそう仏教的なもので、わかりやすいのが、芥川龍之介の有名な小説『蜘蛛の糸』でしょう。

あれはまさに『仏教説話』の近代版。

 

私は神主ですが、神道で仏教のような小動物まで範囲を広げて、殺生を固く禁じるような教えはないと思います。

 

そういえば、第5代将軍徳川綱吉が制定したとされる『生類憐みの令』がありますね。

これは動物愛護なのか、仏教的な殺生を嫌う心情なのか…。様々な説があります。

 

『天国』というのはキリスト教的な概念で、神道にも仏教にもありません。

仏教には、似たものに『浄土』という概念がありますけど、これはキリスト教的な『天国』ではありませんしね。

 

『(仏教的)殺生をしない』から、『(キリスト教的)天国』に行けるでしょ?

という絵馬を神社に納めて平然としている日本人のみなさん。

 

ステキです!

 

(※キリスト教的というのは、旧約&新約聖書的という意味です。キリスト教オンリーではないです)

 

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2018年11月23日