【広島弁95】「にがる」 痛む (身体内部で、苦しさ、気持ち悪さを伴っている感じ)

【れたすはうす】の『広島弁(備後弁)』『岡山弁(備中弁)』
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広島弁備後弁の女子言葉編
名文備後弁訳 編


広島弁(安芸弁~備後弁)~岡山弁(備中弁)講座95

【にがる(苦る)】 痛む (身体内部で、苦しさ、気持ち悪さを伴っている感じ)

 

今日の担当は、管理人の【れたす】です。

 

言葉というものは、『誰がどういう情況で使っていたか』により、その言葉の印象というか、『あや』というか、イメージが個々人の中で異なっていることがあるものです。

 

この【にがる】は、よく耳にはしていましたが、私は自分では一切使ったことがありません。

私の父が、しょっちゅう使っていたのを、よ~く覚えています。

 

「う~、胃がにがるわ~」

と、父は日常的に言っていました。

父は、若いころからずっと、胃腸が悪かったのです。

 

私の父は、50歳過ぎたころに、その持病の十二指腸潰瘍が破裂し、腹膜炎になり死にかけました。

緊急手術で助かりましたが、私は数日、病院に寝泊まりして介護しました。

(数十年前の病院は、親族なら、そういうこともできた)

 

私の父は、ある意味、面白いというか、とんでもないところがあるヤツで、私は好きではありませんでした。

とはいえ、病院で弱って死にかけた父の姿を見たときは、心が痛みました。

 

やはり父親は、めんどくさい好かない人間であっても、嫌ったり憎んだりできるくらい強く丈夫でいてもらわねば…、と感じたことが忘れられません。

 

ベッドで、身の回りの世話をする私への感謝や、それまでの人生の反省?やら、弱弱しいことを言っていた父ですが、悪い部分を切って取ったことが良かったようで、その後、すっかり回復し、以前より元気になりました。

より、憎らしくもなりました。(^_^;)

 

父は、もともと骨格が太く筋肉質の身体だったため、長年の消化器官の不調がなくなると、一層がっしり丈夫な肉体になってしまいました。

胃腸が悪かったせいで、酒も飲めなかったのですが、回復後は、

「酒がうまいのう」

と、毎晩晩酌するようになったほどです。

とはいえ、私と違って酒には弱い体質なので、日本酒やワインを1~2合程度飲むだけの、可愛らしい『酒飲み』でした。

 

というわけで、私のとっての【にがる】という言葉は、私の父親の口癖の【どうにも胃が…にがるのぅ】なのです。

 

が、その父も潰瘍が治ってからは、その言葉を言う必要がなくなり、私はもともと【にがる】を使わない人生を送ってきたので、この言葉は、私にとって『死語』になりました。

 

そのため、この講座番号も、95番目という『後回し』になってしまったのです。

95番でも講座に追加されたのは、『同窓LINEグループ』で、思い出させてもらったからです。

 

にがる】は、漢字では『苦る』でしょう。

苦る】なのだから、『痛み』と『苦しさ(気持ち悪さ)』が混在している感じではないかと思います。

 

腹部だけでなく、背中、腰部などの痛みにも使うようです。

ただし身体の表層的な痛みではなく、内側深部の痛みだと思います。

『苦しさ、気持ち悪さ』がともなうような痛みなのですから。(※私個人の感覚)

 

にがる】は、母を含め、ほかの人が周囲で使っている言葉ではありましたが、私にとっては、胃腸の弱い父の専売特許みたいな言葉でしたので、

にがる】と言えば、お腹。

そういうイメージです。

 

私の感覚では、『虫歯が、にがる』とか『捻挫で足首が、にがる』みたいな言い方は、ピンときません。

でも、そういう使い方もあるかもしれません。

 

標準語 広島(備後)弁
(腹部など胴体内部が
 苦しい感じや
 気持ち悪い感じを
 ともなって)痛む
にがる
痛まない にがりゃ~せん、にがらん
(今現在)痛んでいる にがりょ~る
痛かった にがりょ~た
痛くないだろ にがりょう~るまぁ

 

<会話例1>

標準語
広島備後弁
どうにもこうにも胃腸のあたりが痛くて、立ってられないんだ。
          ↓
えろう腹がにがっとって、立っとられん。
いつから、痛いの?
          ↓
いつから、にがっとるん?(にがっとったん?)



 


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2019年10月06日