ソウルフードは備後風お好み焼き [2]

ソウルフードは備後風お好み焼き(2)

自宅がお好み焼き店なので、私は子供の頃には好きなだけ、お好み焼きを自分で作って食べることができた。
店の鉄板は大きな事務机より広めのもので分厚く、父が鉄工所で作ったものだったが、私はそれで何百枚ものお好み焼きを自ら焼いて食べた。

当然、全部【備後風】である。それが私のお好み焼きでなのである。

さて…。
私が【安芸風お好み焼き】を初めて食べたのは高校生の頃ではなかったかと思う。
広島市内で食べたのである。

広島では店員がお好み焼きを焼く。
焼いているのを見ているときから、
「んんん?」
だったが、
出てきたお好み焼きを見て、実際に食べてみて、
「なぜ具がバラバラなのか」
と不審だったが、当然のこと、それはそれでとてもおいしかった。

そのとき、同じ県内でも、西部地方(広島市)には、ちょっと変なお好み焼きがあることそ知った。

広島市は県庁所在地というだけでなく、中国地方の中心?(れを言うと他県は激怒?)であり、カープの本拠地として全国的存在なので、ついつい『広島市内のお好み焼きが、広島県民のお好み焼き』などと、とんでもない誤解を生んでいるのは、とても残念だ。

【大阪風お好み焼き】は、私が大学生になり東京に住むようになってから、初めて食べた。

さきほども書いたが、ボールにオールインワン状態にして混ぜて、パンケーキみたいに固めてる作り方を見たときはびっくりした。
「なんじゃ、こりゃ」
カルチャーチョックである。

とはいえ、それはそれでとてもうまかった。
大阪風もおいしいということは、認めざるを得ない。

しかし、実家がお好み焼き店であった私の心の中にあるのは、【備後風お好み焼き】オンリーである。
ソウルフード愛なのだし…。

進学で上京して【大阪風お好み焼き】を初めて食べた年の暮れに、広島(備後地方)の実家に帰省した。
「やはり【備後風お好み焼き】を食べねばなるまい」
という意気込み満々であった。

すでに母はお好み焼き店はやっていなかったが、私は母にお好み焼きをリクエストした。
ジュージュージュー。

しばらくして出てきたのは、なんと【大阪風お好み焼き】であった!

「げげっ!」
これはいったい?
パンケーキ状やないか!!

「お袋、これ、なんなん?違おうがぁ!」
「なにが?」
「ボウルで具を全部グチャグチャに混ぜて焼いたろ?大阪のやつみたいに」
「うん」
「なにしょ~るん」

母は少しバツが悪そうに笑っていた。
母はお好み焼き職人だったのであり、自分の作っていた【備後風】に誇りを持っており、特にごちゃ混ぜの【大阪風】には批判的だった人間だからである。

「こっちのほうが簡単にできるんよ。家で作るときは小さいフライパンじゃけ、店をしとったときみたいに作るのは手間じゃし、いたしい(難しい)けぇねぇ」
母は、あっけらかんとしていた。

私のソウルフードは、我が家においては、この日をもって消滅した。

痛ましい話でしょ?

(注)ーーーーーーーーーーーーーーーー
確実に【備後風お好み焼き】を作っているのは、三原市と尾道市。そこでは実際に食べたから。昔ではなく最近も食べたし。

竹原市や福山市などはどうなのだろう。行ったことがあるのでお好み焼きも食べたことがある気もするが、幼い頃の記憶でわからない。
呉市などはどうなのか?三原から呉線でつながっているし…。

備後地方でも、内陸部は?
府中市は確実に、【備後風】だということを最近になって知った。
都営新宿線の神田小川町駅に、『NEKI(ネキ)』さんというお好み焼き店がある。

それと、岡山の東部(備中)の倉敷市などのお好み焼きは、どうなのだろう?
もし同じような焼き方であれば、県境を越え、まとめて【備の国お好み焼き】として、一つのカテゴリーにすべきだと思うぞ。

(このお題、完)

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2018年09月21日