ご神体を見たい? [1] (どこにでも小さな神社があるでしょ? そういう神社にも御神体があるんです)

ご神体を見たい? (1)

「ここの神社の御神体を見たくないか?」
そう言われたら、あなたも見たいでしょう?

かなり前のことだが、私は町内会の役員になったことがある。
町内のブロックごとに役員を出す義務があったため、自営でヒマそうな私を近所の方々が推薦(強制指名)してくださったのである。
たいした仕事があるわけでもなく、私は2年間、わりと楽しく交通部所属として務めた。

当時の私は町内会ではかなり若手であった。
私はしゃべるのも人の話を聞くのも好きで、その地域の歴史や先輩の町会役員さんたちの人生談義などをいつも積極的に聞いていた。

話というものは、話す相手に勝手にしゃべらせると相手は自分がしゃべりたいことだけを話すから面白みが薄いが、こちらが知りたいと感じたポイントについて積極的に質問してそれに答えてもらうようにすると、こちらの熱意も伝わり、大体どんな話でも面白いものなのである。

そういう聞き上手な面があったためか、私は年配者ばかりの役員会にいい感じで溶け込めていたように思う。

私は交通部に配属されていたから、お祭りのときは神輿の前後を歩いて交通整理をしたり、盆踊り会場の周囲の見回りや自転車置き場の管理などを手伝った。

そういう町内会の【ハレの行事】のときは役員としての仕事をしている時間より、お偉方に酒をすすめられて酔っていることのほうが多かった。
特に所属する交通部の部長さんには気に入られ、いつもいつも飲まされていた。

その部長さんが夏祭りの夜に神社の境内に張ったテントの下で、日本酒を飲みながら酔っ払った赤い顔で、冒頭の言葉を発したのである。

「ここの神社の御神体を見たくないか?」
と。

「え、御神体ですか?」
「そうだ」
「そんなものが見れるんですか?というか見て大丈夫なんですか?」
「ふつうは大丈夫じゃないわけだが、まあいい」

まあ、いい?

「・・・」
「だってなぁ、ここの御神体、俺が作ったんだから」

え?
作った?

「え、部長さんが?」
「うん。オレが作ったんだ」
この部長さんは工務店経営の大工さんなのである。

「実は、俺は宮大工でもある」
「へぇ~そうだったんですか。初めて見ました。宮大工さんを。スゴイですね」
「すごくはないが、すごくなくもない。まあそういうわけで、数年前にここの御神体を作るよう頼まれた」

「え、御神体って頼まれて作るんですか?」
「神道だから、本来は自然物なんかなんだろうが、場合によっては作るものもある。人間、具体的なものが欲しいんだ。前の御神体は腐ったから仕方ない」
「腐った?」
「ああ、手入れがなってなかったらしい。宮司が大雑把な性格の家系なんだろう」

私は古代史とか好きである。
まじめなアカデミックなものも好きだが、超古代史みたいな怪しいものも好きである。
なにはともあれ日本の古代史といえば、神社は外せない。 だからこの手の御神体というものは…すっごく見たい。

ちなみに、神道というものは元々社殿はない。自然の大木や巨石やあるいは神威を感じるエリア等を囲って御神体とする。
だがここの神社の御神体は、この目の前にいる赤ら顔のおじさんが作ったというのだ。

この神社の御神体とはいったい…。

「これはな、こっそりだから誰にも言うなよ。明日10時に神社に来い」
「…わかりました」

私は神妙にうなづいた。

(このお題、つづく)

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2018年11月04日