オホーツクに消ゆ(ファミコン版)<1987年頃>
オホーツクに消ゆ(ファミコン版)1987年
【北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(ファミコン版)】は、1987年の6月27日に発売された。
私の記憶では、発売予定日の約2ヶ月前のゴールデンウィーク頃が最終チェック時期になっていた。
会社に泊まりこみで作業し、眠くなれば床に転がって寝て、起きたらそのままパソコンの前に座るという状況だった。
昼ごはんを食べに外に出ると、5月の陽光に満ちた街は浮かれているのに、私たち開発者は髭も剃らず風呂にも入らず…という有様…。
当時ゲーム開発をしていた者たちの現場では、そのようなことが普通のことであったろう。
今ではこういうのは『ブラック』と言われそうだし実際にそういう状況があれば『ブラック』だろう。現在ではこんな環境は無いだろうが、当時はいわばベンチャーである。
ゲーム開発業界というものもカオス期である。
強制など何もないし(納期という強制はあるけど、それを受け入れているのだし)、自分の意思での過激労働だったし、若いし元気だし、当人たちは案外楽しかったりしたと思う。
(もちろん、しんどかった!)
もうほぼディバッグも終わりで納品間近という日に、アスキーの担当者がやってきて、
「ストーリー上、一つ場面を増やすことになりました」
と言ったときには、我々はぶっ飛んだ。
場面を増やすということは、まずその場面用にもう一枚グラフィクス(ドット絵)を作成しなければならない。
また、アドベンチャーゲームであるから、その場面にはコマンド設定も必要になる。
そうなると前後のつながりや全体のシ-ンの流れなどに新たな不具合が出る可能性がある。
全面的ではなくとも、デバッグのやり直しである。
「おおおおおおー!たすけてくれぇ~!もうイヤだぁ~!」
自分たちが仕込んだストーリー(プログラムとデータ)が、「そのとおりになっているか」を延々と繰り返して確認するというデバッグ作業は、一定の期間を超えるとほんとうに精神的に拷問化するほどキツいのだ。
私はその後もたくさんの作品で、自分たちが作ったゲームのデバッグ(同時に修正や改善作業)をやりすぎて、ゲームで遊ぶということができなくなった。ゲーム画面を見たくないのだ。
(アクションものはまだ良いが、アドベンチャーやロールプレイング物は楽しめない不幸な身体に…)
ともかく1場面増やし、全員で集中的に確認作業を行い無事納品はできた。
原作者堀井雄二氏とは、開発前に一度だけ会って打ち合わせをした。
前年にドラクエがMSXでエニックス発売されていたころである。
堀井氏とはエニックスのパーティなどで会ったと記憶するが、話したのはそのとき一回だけになった。
堀井氏は忙しい身だったので、その後はアスキーの担当者が堀井氏と我々の間をつないだ。
ゲームで使用したグラフィックスは元絵をイラストレーターの方が描き、それを元にして使用されている画像は全て私がドット絵に落とした。
プログラムは、そのあといくつかいっしょにファミコンの開発(…たとえばアイスホッケー)をしたN氏。
サウンドプログラムは、これまた素晴らしいプログラマーである、H氏。(MSXバレーボール【アタック・フォーをファミコン版にしてくれた!)
私をゲーム界に引き入れ、その後独立して一緒にゲームを作ることになるT氏と、その後私の嫁になるT嬢は、アシスタントとして参加している。
このコラムを書くにあたって、ネットでこの【北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ(ファミコン版)】の動画を探していくつか見てみた。
古いゲームなのに多くの投稿があるので、驚いた。
それにしても、う~ん懐かしいし、恥ずかしい。
スペックの問題があるにせよ、もっとうまく描けただろうに…。
元絵のイラストレータさん、ごめんさない。
印象的なシーンの一つに、【めぐみの入浴シーン】が紹介されていた。
「あ~、思い出したぞ。確かバスタオルが…」
気になる人は、 ’めぐみのバスタオル’ で検索してください。 ファミコン版オホーツク通のファンなら、もう知ってるでしょうけど。
(追記)
私が作ったPC-6001のゲームの紹介を見たことから、2018年7月くらいから、Twitter を始めた。そこでいろいろやりとりをしていると、私が知らなかったり、勘違いしている部分を指摘してくださるこ方もあり、Youtubeのスタッフロールなど見て、いろいろ思い出し、内容を修正しました。
それまで、私の勘違いが記載されていたことをお詫びします。
特にプログラム担当者の誤記。
N氏、H氏、すみません!(別の意味でT氏も…)
ゲーム開発は、若いころの強烈な体験なので、大筋は当然覚えていて間違いないんだけれど、ずっと業界にいないと、ゲームのことを忘れ、細かな記憶が失われる。
なんか、悲しい。
私にとって、『ゲーム開発』は『青春グラフィティ』というものなのだけど、ゲームを愛している方々にとっては思い出だけではなく、『ゲームの歴史・記録』なのだということを、つくづく感じました。
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